「ITSM」とは?トレンドITワード解説!
2022年6月現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の記事で「ITSM」「ITサービスマネジメントツール」という言葉を目にすることが増えました。どんなツールなのか、なぜ導入されているのか、どのような考え方をするツールなのか、日本の企業での使われ方をご紹介します。
ITSMとは?何をマネジメントするの?
ITSMはIT Service Managementの頭文字をとったもので、日本語訳をすると「ITサービス管理」です。
wikipediaによると、「ビジネス部門が必要とするITサービスの安定的な提供と、ITサービスの継続的な改善を管理するための仕組みを指します」とのこと。
「ビジネス部門が必要とするITサービスの安定的な提供」と「ITサービスの継続的な改善を管理するための仕組み」。いったいどういうものでしょうか?それぞれ見てみましょう。
「ビジネス部門が必要とするITサービス」の例:住宅メーカーのIT担当者になって考えてみよう
あなたは、従業員500人規模・90営業所規模の住宅メーカーのIT担当に着任しました。IT担当チームは4人。チームで担当する業務は、自社のサーバ保守、各展示店舗・オープンハウスのセキュリティシステム、オフィスのプリンター・Wi-Fiなどの通信機器インフラの管理、社員のPCやスマホなど幅広いIT・通信にかかわるインフラ業務の整備を担当しています。
「ビジネス部門が必要とするITサービス」たとえばこんなもの
全国各地津々浦々にある営業所に配属された社員から、日々こんなヘルプリクエストがやってきます。
「営業所のプリンタのトナーがハマらない」といったものから、
「スマホを落として、画面割っちゃった」といったシリアスなもの、
「営業車にパソコン置きっぱなしにしてしまって、車内温度が上昇してパソコンの電池がパンパンになってしまった。パソコンは動くけどそのまま使っていいのか」といった緊急性が高いものまで…
実に、さまざまです。
ITチームは、こういったリクエストに対し、組織の効率運営のために決めたルール・順番・工数から優先度をポイント化して、ポイントが高い順に仕事を回していくという仕組みに沿って運用しています。
しかし、リクエスト方法が統一されていません。チームメンバー個人あてのメールだったり、電話だったり、Teams(ビジネスチャット)だったりと様々です。スタッフはいろいろな連絡手段から、管理用エクセルシートに転記する必要があります。
あるとき、ひたちなか営業所のドーキさんは、同期入社のあなたの私用携帯電話に直接をかけてきました。「うちの営業所、トナーが切れちゃったみたいなんだよね。同期のなじみでさ、すぐ対応してよ」とのゴリ押し依頼です。
ここはビジネスの場なので、いくら同期だろうが「わかった、すぐ対応するわ」とはいきません。
「上司のウエダさんの同期のテンダさんがIT部門にいたときは、同期のなじみでやってくれたって言ってるぞ」と、ドーキさんは退きません。
「今、対応順位を点数化するシステムになってて、そういう個別対応できないんだよ」あなたはそう答えますが、ドーキさんもウエダさんの成功体験ゆえの”ごり押しリクエスト”ですから「同期のなじみでなんとか優先度上げてくれよ」と、お互い困ってしまいます。
そのほか、スマホが壊れた社員が焦って何度も電話をかけてきて、リクエストの重複が起きるということもありました。
経営陣は、ITスタッフのインシデント対応速度が遅いことから、スタッフに原因をヒアリング。するとチームメンバーには、以下の負担(コスト)がかかっていることがわかりました。
「ゴリ押しでなんとかしようとする社員対応コスト」…ドーキさんの例です。
「優先度計算コスト」…優先順位を計算する時間・手間。
「重複がないか・対応漏れがないか等のリクエスト管理コスト」…いろいろな連絡手段から報告されるので、抜け漏れ・重複がないかの確認・管理の手間。
これらがITチーム全体の業務効率を下げており、本来3分以内で終わる対応が10分後に…ということとが頻発していました。
この問題解決に向け、社内のインシデント管理・ヘルプデスク業務を効率化するとして評判のITSMツールを導入しました。
ITSMツールが管理してくれるもの
このチームでは、サービス提供先は「社員」です。サービス管理する対象物は「社員のヘルプリクエスト」。
まず、これまでバラバラになっていた問い合わせ対応窓口をTeamsのチャットボットとフォーム入力の2つのみに制限しました。リクエストがあると、ITSMソフトウェアにそのリクエストが「課題(あるいはチケット)」として登録されます。
そしてこれまでエクセルで対応していた優先度ポイント計算を自動化できるようにしました。これで、IT担当者の「タスクを探す業務」「優先順位をつける業務」が省かれ、業務効率化につながります。IT担当者の一部の役割を機械がこなすことで、IT担当者は別の業務ー「改善を考える」仕事に時間をあてることができます。
申請者にとっても、リクエスト種類ごとにワークフローが割り当てられ「あとどれくらいで解決するのか」と解決までのプロセスが可視化ができるようになりました。
「ITサービスの継続的な改善を管理するための仕組み」
ITSMは長く使い続けていくほど、課題発生から解決までにかかった時間や発生する問題の傾向など、さまざまな情報が資産化されていきます。これまで日々の業務をこなすのにいっぱいいっぱいだったIT担当者は、ITSM導入で時間ができたため今度は改善に着手ができます。
従来定めていた作業優先度ポイント制度の順位付けシステムに改善の余地があるーー。
1990年台入社のスタッフはオープンハウスのオートロックを無効にするエラーが多いため、この期の入社には別途研修が必要ーー。
蓄積されたデータから解決策を試行錯誤していくうちに、会社会社全体のベストプラクティス(最善の方法)に導けます。
ITSMツール、どんなものがあるの?
有名どころですと、ServiceNowや ZenDeskといったものがあります。サービスの違いなどは各サイトでご確認ください。
リックソフトが提供するアトラシアン社のJira Service ManagementではITIL(*ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティスをまとめた書籍群)に準拠し、アドオン(アプリ)で機能拡張ができます。
問い合わせ機能のナレッジ化ができているので、スタッフ向けのかんたんなQAサイトとなります。
たとえば「営業所のプリンタのトナーがはまらない」と検索すると、「プリンタ関連の問いあわせはプリンタ会社に連絡。連絡先はプリンタの左わきに電話番号が書いてある」と案内が自動で出るようになり、IT部門の連絡を待つことなく自力で解決できます。
詳しくは、弊社サイトをご覧ください。